咀嚼と健康 味覚の発達


咀嚼は歯や体全体の健康に密接な関わりを持つだけでなく、味覚の発達にも大きく関係しています。

噛むことで得られる味覚の発達への効果

栄養のある食べ物を美味しく食べることは、体の健康にとても大切なことです。味を感じる感覚のことを「味覚」と言いますが、味覚を発達させることによって、味覚の幅を広げ、より多くのものを美味しいと感じるようにしたいものです。
味覚の基本味には「甘味」、「酸味」、「塩味」、「苦み」、「うま味」があり、味覚は舌の舌乳頭にある味蕾(みらい)という感覚器官で感じ取ります。味は食べ物の溶け出した化学成分が味蕾に伝わり、感じますが、その食べ物を溶かす時に必要になるのが唾液です。以前にも咀嚼することで唾液の分泌量が増えることはお話していますが、これは消化・吸収だけでなく、味を感じるためにもとても重要なことです。また、味覚を発達させるためには、味だけでなく咀嚼をすることで食べ物の硬さや食感、形状、噛むときの音などを認識し、五感をフル活用して味わうことが大切です。

よく噛んで食べるための工夫

味覚の発達のピークは生後3か月から10歳頃とされています。この時期に味覚を発達させることでお子さんの充実した食生活に繋がります。

  • ゆっくりと食べる
    現代のお子さんは習い事など忙しいとは思いますが、急がないでしっかりと咀嚼をして味わって食事をするようにしましょう。
  • 口の中の食べ物を飲み物で流しこまない
    食べ物は細かくなるまでしっかりと噛んで、自然に飲み込むようにしましょう。
  • 旬の食材を薄味で料理する
    塩分が多い食べ物を食べる機会が多いと、味覚の感覚が鈍くなってしまうので、なるべく薄味にしましょう。旬の食材は甘味や苦みなど複合的な味を持っているので、よく噛んで食べて美味しく味わいましょう。

まとめ

10歳で味覚の発達が止まってしまうわけではないので、10歳以上のお子さんも様々な食材をしっかりと咀嚼して食べるようにしましょう。

咀嚼と健康 胃腸の働きを助ける


食べ物をよく噛んで食べることは、歯はもちろん、全身の健康を守るためにとても重要な役割を担っています。今回はその役割の一つ、胃腸の働きを助ける効果についてお話します。

噛むことで得られる胃腸の働きへの効果

よく噛んで食べることで、食べ物を細かく砕いて、消化しやすい形にしてくれます。ですから、食べ物をあまり噛まずに大きな状態で飲みこんでしまうと、胃に負担がかかり、ひどい時は消化不良をおこしてしまいます。
また、以前にもお話しましたが、咀嚼することで唾液の分泌が促進され、食べ物を噛めば噛むほど、唾液がたくさん出ることになります。食べ物を胃に届けるためには、飲み込むことが必要ですが、唾液は食べ物と絡まることで塊(食塊)にし、飲み込みやすくしてくれる効果もあります。また、唾液には消化酵素アミラーゼが含まれていて、このアミラーゼはご飯やパン、じゃがいもなどに含まれるでんぷんと反応して、分解する働きがあり、このおかげで、胃腸の負担を軽減することができます。さらに唾液には胃酸を中和させる働きもあるので、胃の粘膜の保護にも役立ちます。

対処法

胃腸の働きを助けるためにも、食べ物はよく噛むようにしましょう。しかし、昔から日本人が食べてきた和食は比較的よく噛まなければいけない食材や料理が多かったのですが、現代の食事は洋食が多くなったこともあり、全体的に柔らかくなっている傾向があります。よく「30回よく噛みましょう」と言われますが、柔らかい食べ物を30回咀嚼することは困難です。ですから、ごぼうやレンコンなどの根菜類など歯ごたえがよいものを意図的に食事に取り入れるようにするとよいでしょう。また、ブロッコリーなどの野菜も少し硬めに調理すると咀嚼を促すことに繋がります。

まとめ

食べ物の消化は、まず口の中でスタートします。後へと続く胃や腸の負担を軽減させるためにも、食べ物はよく噛んで食べるようにしましょう。

咀嚼と健康 言葉の明瞭化


咀嚼することと、言葉の発音をはっきりさせることに密接な関係があることをご存知でしょうか。

噛むことで得られる言語(発音)の変化

言葉の明瞭化に咀嚼が関わっていることは、これから言葉を覚える幼児や、今後心身の機能が衰えてくる高齢者にとってとても重要な関係性です。「よく噛んで、味わって食べる」ことは幼児、高齢者だけでなく、全世代にとってとても大切ですが、幼児において「かまない」、「かめない」など摂食行動に問題のあるお子さんと問題のないお子さんとを比較すると、問題のあるお子さんが発音・言葉が不明瞭である割合が高いことが報告されています。話すことは“構音機能”というヒト特有の話し言葉の音声を産生する機能が関わっていて、上あご、下あご、舌、唇を動かすことで音声となりますが、これらを動かすには筋肉が必要となります。咀嚼することで顔面全域の筋肉が鍛えられ発達し、また口腔内も正常に発達します。
また、高齢者については言葉をはっきりと喋るためには、上あご、下あご、舌、唇の筋肉を適切に維持をすることが求められます。近年では「オーラルフレイル」という言葉も多用されるようになりましたが、“オーラルは口”、“フレイルは虚弱”という意味です。すなわちオーラルフレイルとは、加齢による衰えの一つで、食物を噛んだり飲み込んだりする機能が低下したり、滑舌が悪くなったりするなど、口腔機能の虚弱化を指します。

対処法

お子さんの場合は食事の時にどれくらいお子さんが咀嚼しているか、数えてみましょう。理想はひと口で30回です。また、食事中お子さんに「早く食べなさい」などと言わないようにしましょう。
高齢者の方も食事をする際、よく噛んで食べるように促しましょう。また、食べにくいからといって柔らかいものばかり食べていると、咀嚼機能が低下してしまうので、気をつけましょう。

まとめ

言葉をはっきりと喋るためにも食事をする時はよく噛んで味わって食べることを習慣づけましょう。

咀嚼と健康 脳の発達・活性化


昔から「寝る子は育つ」と言われていますが、「かむ子も育つ」ことをご存知でしょうか。今回は咀嚼と脳の発達、活性化についてお話したいと思います。

噛むことで得られる脳への変化

食べ物を口に入れてよく噛むと、咀嚼筋が活発に動くことで脳への血流が良くなり、あらゆる部位の脳細胞が活性化されます。噛むことで活性化される脳の部位の一つが「海馬」です。「海馬」は“記憶の司令塔”と呼ばれていて、知覚・記憶・学習・思考・判断など認知機能全般を司る重要な部分です。近年の傾向として食べ物が柔らかくなり、子どもの咀嚼が減り、顎の骨と咀嚼筋の発達が遅れることで、学習能力に悪い影響を与えているというケースもあります。また、高齢者が歯を失い、咀嚼数が減ると、認知症のリスクが高まるという報告もあります。
マウスに離乳期から成長期にかけて粉末のエサを与え、顎の骨と咀嚼筋の発達が不十分なグループと固形のエサを与え、顎の骨と咀嚼筋がよく発達したグループを作り、記憶と学習能力のテストを行ったところ、固形食マウスの方がよい成績になりました。テスト終了後、両マウスの海馬の神経組織を分析したところ、固形食マウスの方が海馬がよく発達していたことがわかりました。
また、しっかりと噛むことでコミュニケーション、感情の抑制、記憶のコントロール、意思決定などの働きを担う前頭前野も活性化されます。高齢者にとってはこの前頭前野の活性化が認知力の向上につながると言われています。

対処法

近年では柔らかな食べ物が多く出回っていますが、お子さんには咀嚼が必要な食べ物を積極的に与えましょう。また、高齢になっても噛むことができるように、小さな頃から健康な口内環境を維持することも大切です。残念なことに加齢によって義歯になった場合も、咀嚼をしっかりすることで認知症予防を期待することができます。

まとめ

脳の発達、活性化を促すために、咀嚼を多くするように促しましょう。

キシリトールを虫歯予防に役立てましょう

虫歯予防にいいとされるキシリトール。キシリトールにはどのような効果があり、どのような製品があるのでしょうか。

虫歯予防に効果が期待できるキシリトールの特徴とは

キシリトールは天然の糖アルコールで砂糖と同じくらいの甘みがあります。
虫歯は口の中のミュータンス菌が作る酸によって歯のカルシウムを溶かし、穴をあける病気ですが、キシリトールは酸が全くできません。また、キシリトールは甘みが強いので、唾液の分泌を促進します。唾液が多いと口の中の酸を中和することができるので、虫歯の抑制に効果が期待できます。
また、キシリトールのガムやタブレットを口の中に入れることで、歯垢がつきにくくなり、歯の再石灰を促進して歯を固くします。その上、キシリトールには虫歯の原因となるミュータンス菌の活動を弱める作用があります。このようにキシリトールは口の中を虫歯ができにくい状態にするのを助けてくれます。

キシリトール製品について

キシリトールは多くの果実や野菜に含まれ、人体でも作られますが、市販されているキシリトール製品のキシリトールは、白樺や樫の木から抽出されるキシランヘミセルロースを原料にして、工業的に作られたものです。
キシリトールの虫歯予防効果が期待できるのは、ガムとタプレットです。ガムもタブレットも長い時間口の中に入れているものだからです。
いずれも高濃度でキシリトールが配合されているものを選ぶようにしましょう。(50%以上)また、砂糖などの甘味料が入っていないものを選ぶのもポイントです。パッケージにシュガーレスと表記されていれば間違いありません。
キシリトールガムは食後30分以内に噛みます。ガムを噛むことで唾液の分泌も促進されます。タブレットも食後30分以内に口に入れましょう。タブレットは噛まずに最後まで舐めるようにしましょう。

<まとめ>

キシリトール製品を上手に生活に取り入れて、虫歯予防に役立てましょう。