旧石器時代から!? 意外と長い歯周病の歴史(2)

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アウストラロピテクスやネアンデルタール人も悩まされていた歯周病。
その原因の一つとして考えられているのが「火を使うこと」と、それによる食生活の変化です。

火を使うと歯周病に?

ヒトの祖先やその仲間が火を利用するようになった時期については諸説あり、現在では約180〜80万年前のことと考えられています。火山の噴火や雷、火災から火を知り、やがてこれを利用できるようになったと推測されており、火によって危険な動物を遠ざけ、夜に明るさをもたらし、寒さをやわらげられるようになりました。

食べ物も加熱するようになりました。食べ物を煮炊きすることは、食べ物を食べやすくおいしくするだけではなく、衛生的にも大きなプラスとなりました。

しかしこのことが、歯周病の一因となったのだと考えられています。

何千年も変わらず生きてきた歯周病の原因菌

歯周病の原因は複合的です。歯垢や歯ぎしり、喫煙、ストレス、糖尿病等複数の要因が重なって歯周病が進行していきますが、火を通した柔らかい食べ物や、食物繊維の少ない食べ物を食べる食生活も実は、歯周病の原因の一つ。そう考えると、火を使っていたであろうネアンデルタール人が歯周病に悩んでいたとしても不思議はないと言えるのかもしれません。

もう少し後の時代、約1万年前から現代にかけてのホモサピエンス(人類)の歯石を採取、解析した研究があります。この研究の結果からは、現代の歯周病の原因菌と同じ細菌が、何千年も前の人たちの口の中にもいたことが明らかになりました。長い年月が過ぎ、人間の生活は食事を含めて色々なことが大きく変わったにもかかわらず、歯周病の原因菌はヒトの口の中で変わらずに生きてきたのです。

歯周病は美食の副作用?

古代エジプト文明の時代(王朝時代:紀元前3100〜332)には、歯周病は一般的と言える病気となっていたと考えられています。王や貴族などの上流階級のミイラの歯には、庶民のミイラや人骨に比べると歯周病の痕跡が多く残されており、甘いものや柔らかい食べ物、脂質の多い食べ物など贅沢な食生活が歯周病につながったと推測されています。この頃の上流階級の人々のミイラには肥満体が多いのです。糖尿病などの生活習慣病と関連していたかもしれません。

 

時代が進むにつれて、身分が高く食べ物に恵まれ美食をしていた人たちほど罹患し、症状が進行していたと考えられる歯周病。長い歴史の中で変化した食習慣が大きく影響し、今では人類史上最も感染者数の多い病気と言われるほどにまでなったのでした。


【参考】

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旧石器時代から!? 意外と長い歯周病の歴史(1)

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世界の成人の半数以上は歯周病に罹患していると言われています。また2001年のギネスブックに全世界で最も蔓延している病気として掲載されるほど広がっている歯周病。人類はいつからこの厄介な病気と付き合ってきたのでしょうか。

アウストラロピテクス‐アフリカヌスに見つかった歯周病の痕跡

私たちの祖先で歯周病の見つかった最も古い例は、「アウストラロピテクス・アフリカヌス(「アフリカ南部の猿」の意味)」であるとされています。この祖先は200万年〜300万年前に生息していたアウストラロピテクス属の一種で、南アフリカで化石が発見されました。歯周病というと現代病のように思いがちですが、少なくとも200万年以上もの古いお付き合いなのです。

ネアンデルタール人も歯周病に苦しんだ〜楊枝で歯のお手入れ〜

ネアンデルタール人(約25万〜3万年前に欧州と西アジアに住んでいた、ホモ・サピエンスとは別系統の旧人)にも、歯周病の痕跡が見つかっています。

スペイン、バレンシアのコバ・フォラダ(Cova Forada)で、5万〜15万年前のものと推定されるネアンデルタール人の頭蓋骨が発掘されました。この化石には歯が残っており、歯周病の痕跡があったというのですが、驚いたことに、楊枝で歯の手入れをしていたらしいのです。

人類の祖先が楊枝を使い始めた歴史も意外に古く、160万〜190万年前に存在した初期人類ホモ・ハビリスでも歯をつついていた痕跡は確認されているとのこと。ホモ・ハビリスよりも後に生きたこのネアンデルタール人が似たような方法で歯のお手入れをしていても不思議はないのかもしれません。

このスペインに生きたネアンデルタール人の歯周病は、骨が溶けるほどの重症の歯肉炎だったそうで、不快感や痛みは相当ひどかったことでしょう。その歯に残された、楊枝の痕跡。楊枝を歯間ブラシのように使って、痛みを和らげていた可能性があると考えられています。

ネアンデルタール人が歯周病を治療!?

スペインのエル・シドロン洞窟で暮らしていたネアンデルタール人の歯石からは、歯周病の病原菌とともに、ポプラとアオカビの一種のDNAが検出されたそうです。ポプラは鎮痛剤アスピリンの原料になるサリチル酸を含み、アオカビは抗生物質ペニシリンを生成します。そうした薬効を熟知した上で、歯周病等の治療のためにそれらを摂取していた可能性と考えられており、これは楊枝を使っていた以上の驚きではないでしょうか。


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